タンドリーチキン

[エッセイ]

 

私の胸を締め付けるもの――それは恋であろうか、いや、まごうことなく空腹である。

そもそも胸というよりみぞおちの上である。

 

私は今、タンドリーチキンに猛烈な恋心をいだいている。

 

人はある物事について「考えるな」と言われると、むしろそのことしか考えられなくなる…というのは有名な話かもしれない。

そう言えば、『スタンフォードの自分を変える教室』でも取り上げられていた。

 

「ヨーグルトの広がり」を書き終えた後に猛烈な空腹感に苛まれ、口ではダイエットなどとのたまっておきながら、いやむしろ、減量しているからこそ余計、私はヨーグルト料理を腹の底、いや、胃の底から欲していた。

 

ヨーグルト料理の中でも簡単で美味しく、まずくなりようがないもの……それはタンドリーチキンである。 これは私が物心つくかつかないかという頃に覚えた料理であるから、相当に簡単なものとご想像していただいていいだろう。

 

脂ののった鶏もも肉の、ヨーグルトとスパイスのほどよく絡まったタンドリーチキンは冷えてもなお美味しくいただけるし、お弁当のおかずにももって来いだ。 況やできたてをや。

 

用意するのは、鶏(できればもも肉)、好きなスパイス各種、ヨーグルト、塩だ。

スパイスに関しては、SBの粉末カレー粉が大変便利である。カレールーを買ってしまうと、それはカレーライス用としてしか使えないが、SBの粉末カレー粉は缶に入って見栄えも良く、パンケーキに入れたりコロッケに入れたり2日目のスープに入れたりなどできて大変使い勝手が良い。

 

さて、鶏は一口大に分けたら塩を軽く振ってビニールやボウルなど、適当なものに入れる。

その中に、鶏に絡まる程度にヨーグルトを入れ、好きなスパイスを放り込んだら、肉を放置する。 ……と、味がしみ、肉も柔らかくなるので良いのだが、大抵そのような時間はないので、そのまま熱したフライパンで炒める。


油はオリーブオイルやバターが良い。

 

ちょうど良いくらいに焼き色がついたらビールと一緒に流し込む。

トマトや玉ねぎスライスと交互に食べると、スパイスと油の香りでいっぱいになった口内をリフレッシュすることができ、一口ごとに大きな感動を味わえて大変よろしい。

 

酸味のあるフレッシュチーズと食べても合う。 つまり、ビールでも赤ワインでもテキーラでもウォッカでも合うのだ。 最近知った、ラクという無色透明で、水を加えると白くなるトルコの酒もなかなかであった。

 

料理を食べて、酒を飲む。こんなに素晴らしいことは他にあるだろうか。

これは鶏の脂とヨーグルトのマリアージュを楽しむものなので、今回ばかりは是非とももも肉などの脂の多い部位を使うことをおすすめする。

 

ご馳走様でした。